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高校生になって、自分を少し変えてみたくて。 中学生の自分から逃げるように……どこでもいいから電車通学でなるべく遠い高校に進学したいと言った。 中学校の友達が一人も居ないのは少し寂しかったけど。 周りが知らない子ばかりなのは不安だったけど。 けどそれでも…… 少しでも遠くに行けば、新しい出会いがある……そんな気がしたんだ ―――― 3番ホーム 駅のホームでボーっと電車を待ってるのもあれだからメールが届いてないか携帯を開けてみる。 ……サイトからばっかりだ。 私は小泉 朝霞 [こいずみ あさか]。 性格……は……あまり活発じゃないかな。 普通に人見知りもするしね。 ちなみに、今年から高校一年生で今日でちょうど入学して二週間目。 やっと電車通学に慣れてきたかな? って感じ。 ― 3番ホームに電車が参ります ― 「ふぅ……田舎だと人が少なくていいけど……電車の本数まで少ないのはどうにかならないのかな?」 私が通う高校は将星学園ってところで、すっごい田舎ある。 だから私は世のお父さん方が毎朝戦っているであろう満員電車には縁が無い。 まぁ、その代わり一つ乗り遅れると三十分近く普通に待たされる。 しかも私の帰る方向にはうちの生徒はほとんど居ない。 ちなみについさっきもトイレに行ってたせいで乗り遅れた。 電車の本数が多くならないのかと改札横にあるご意見BOXとか書かれた箱に投稿してみようかと本気で思ったけど この近くに住んでる友達によれば十数年もこの状態らしいので仕方ないと自分に言い聞かせる。 「本当にどうにかして欲しいよ……まっ、人が少ないって事でチャラかな?」 若干態度が大きい気がしたけど、三十分近く待たされたんだから別にいいよね。と思うのは私の我侭だろうか? ― プルルルルルル…… ― 電車の発車を知らせるベルが鳴る。 この次の瞬間だった。 私が運命とも思える出会いをするのは。 「ちょっと待ってくれーーーーーーーーーーー!!!!!!!」 「えぇっ!?」 思わずびっくりして声を挙げちゃったけど、幸い車両には私以外誰も乗ってなかったのでほっと胸をなでおろした。 「な、何……?」 声のした方を見てみる。 ちょうど階段を上りきってこっちに走ってきている男の人が見えた。 しかも……私と同じブレザーを着てる。 ネクタイの色から二年生であるとわかった。 「待ってくれ〜! そんなに焦る事に何の意義ある!? そうだ!! 焦るんじゃない!! 一分ぐらいの誤差は問題じゃない!!」 意味のわかない事を連発しながらその人は私が乗っている車両へと走り込んで来た…… いや、この場合飛び込んで来た。の方が正しい気がする。 だけど……ダイヤを必死に守っている駅員さんにも聞こえるように一分ぐらいの誤差は問題無いと言い切った彼はすごいと思った。 「あっぶねーーーーーーーーー!! セーーーーーフ!!!!」 そしてどの席も空いてるのにわざわざ私の座っている所の近くに座るその人。 なんで他の席に行かないんだろ……気まずいよ…… うっかりその人を見てしまって目線まで合ってしまったら余計に大変だろうと助けを求めるように携帯を見る。 こうゆう時に限って誰からもメールは来ていない。 ここには居ない友達にちょっとした恨みを勝手に持つ私。 明日とりあえず「たまには役にたってよ!」 と言っておこう。意味わかんないだろうけど。 さて、どうしよう…… 誰かにメールを送っても良かったんだけど、私は横の人が気になりだした。 ぶっちゃけた話をすると……顔をよく見てみたい。 さっきはよく見えなかったから……私目があんまり良くないし。と言っても普段は眼鏡なしでも十分なんだけど。 「ふ〜……あっつ〜……」 手で顔を扇いでいるのが視界の端っこで見える。 ……余計に気になりだした。 ちょっとぐらいなら…… あぁ……意思が弱いな。私。 少しビクビクしながらその人の顔を盗み見る。 「…………っ!!」 これは……ちょっと……まずい、かも…… かぁと顔の温度が上がってくるのが自分でもわかる。 健康的に日焼けした肌。 短髪で少し立てた感じの髪型。 そして爽やかな笑顔。 やばい。ど真ん中だ。 この距離ぐらいなら良く見える私の目はその人の顔を捉えて離さない。 すぐに目を逸らさないと、と思う気持ちとは裏腹に私の目は釘付けになってしまっている。 と、次の瞬間…… 「ん?」 「……っ!!」 その人が私の視線に気付いたらしく、振り向いて一瞬私と目が合う。 私の行動は早かった。 即座に目を逸らして下を見る。 あ〜〜……何やってんの私〜〜〜!! 激しい自己嫌悪に陥る私。周りからみたら怪しいかなとふと思った。 っていうか!! そんな事どうだっていい!! まずは火照った顔を冷まさないと! そう思えば思うほど顔は熱くなってゆく。 耳まで真っ赤なんじゃないかな? それに湯気とか出てたらどうしよう…… っていうか髪とかはねてないよね? メイクは……してないから大丈夫だよね? どうでもいいような事まで頭が回って余計に混乱してくる。 あ〜……本当にやばいな。私。 一目惚れなんて……ドラマとか小説の世界の事だと思ってた ―――― その日、私はその人が電車を降りるまでずっと下を見続けていた。 ……ただでさえ長い電車に乗っている時間がいつもの数倍に感じられたのは言うまでもない。 |
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