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「っていうかね、ぶっちゃけ薫と諒君って本当に付き合ってないの?」
「「なんで!?」」
放課後、近くの喫茶店に寄った四人。
席に座って注文するなり、美咲の第一声がこれだった。
Episode 1
― 親友以上恋人未満・後編 ―
「なんで!? って言われてもね〜」
ねえ。と啓吾と視線を交えつつ頷く。
「いや、だって諒だよ!?」
「俺と薫が!? はぁ!?」
「無い無い無い!! それは無い!!」
「ただの幼馴染だぞ!?」
「ただたまたま家が横でなんだかんだ言って一緒にいるだけじゃん!!」
「そうだそうだ!! 勘違いにも程があるぞ!!」
「そうだよ美咲!! 何言ってんの!?」
動揺のせいか、二人はまくし立てるように言葉を並べる。
一呼吸、間を置く。そして……
「「ありえないって!!」」
ハモった。これはもう弁解しようのないくらいハモった。
「ほら結局ハモってんじゃん」
「「…………」」
ズバリ指摘されて何も言えない諒と薫は結局黙り込む。
無言のタイミングも同じであるから、これもハモると言えなくも無い。
「まっ、そこまで否定するなら別にいいけどね〜」
じゃあ言うなよ。
二人はそう思った。が、言葉にするとまたハモりそうなのでやめておく。
「じゃ、じゃあさ、逆に聞くけどいい?」
あまりよろしくない話の流れだった為、とりあえず話題を転化させてみようとする薫。が……
「劣勢だからって話題を逸らさない」
「むぅ……」
美咲に防がれた。
「お前等は休日とかどうしてんの?」
今度は啓吾が口を開く。
どうやら目の前のカップルはタッグを組んで薫と諒を質問地獄へと誘ってくれるらしい。
気持ち的には前門に虎と狼が居て、後門は閉まっている……そんな感じだ。
「俺が薫の買い物に付き合わされたり……」
「格ゲーで対戦したり」
「面倒な宿題分担してやったり……まぁ、大半俺がやってるけど……」
「お互いの親がそろって仲良くどっか行ってる時は二人でファミレス行ったり……そんな感じー」
「……メールとかは?」
相当呆れ気味に美咲が聞く。
隣の啓吾に至っては呆れすぎてため息すらついている。
「メールとか電話は……まぁ、部屋が向かい合ってるからいつでも話せるし……」
「わざわざ……ねえ?」
「「…………」」
啓吾と美咲はお互い目を合わせ、ため息をついて一言。
「それじゃあ付き合ってんのと一緒じゃん……」
「確かにな……」
「「違うって!!」」
「じゃあ、あんた達の関係っていったい何?」
「「うっ……」」
「け、啓吾……」
美咲の容赦ない攻撃にたまらず啓吾に助けを求めた諒であったが、
「頑張れ」
啓吾はそれを容赦なく一蹴した。
まったく心のこもってない言葉で応援されたところで何の足しにもならない。むしろ虚しい。
しかも啓吾はメールが届いたらしく、携帯をいじっていたので諒には目もくれない。
「…………」
カップルってやっぱり何処か似てるものなのか? 諒はそう思った。
「で、何なの?」
その間も美咲は攻撃の手をゆるめようとはしない。
「うぅぅ……あぅぅ……」
諒が啓吾に話しかけた為、美咲の追及を一身に受けることになっていた薫はあからさまに動揺していた。
そして必死に誰かに助けを求めようと目を泳がしていた。
「……親友じゃないのか?」
あまりにも薫が可哀相だったので啓吾が助け舟を出した。
しかしやっぱり携帯をいじっている。
聞きたい事だけ聞いて後は放置のようだ。
「ん〜……それじゃぁ足りない気がする……」
「諒はどうだ?」
「俺も同じだよ、なんか……足りない」
「なんなのよそれ〜……ありがちな恋愛映画じゃないんだから」
美咲が不満の声をあげる。どうやらどうしても認めさせたいらしい。
「……親友以上恋人未満!!」
必死に探していた言葉が見つかったのか、親指を立てながら諒が叫んだ。
「あぁ!! そんな感じ!!」
どうやら薫も同じ結論に至ったらしい。
「むぅ……なんだかなぁ〜……」
「まぁ、いいんじゃないのか? 二人ともこう言ってるし」
「啓吾がそう言うなら、いっか」
「うんうん! そうして!」
やっと美咲の攻撃から脱する事のできた薫は心底嬉しそうだった。
「っていうか……啓吾って結局どっちの味方?」
「面白くなりそうな方、もしくはあまりにも哀れな方」
「「…………」」
あまりにキツイ言葉でも悪びれる事なく言われると逆に受け止められるんだな。と、思考の端っこで二人はもはや客観的にそんな事を思った。
「っていうか、今日の―――」
「そういえば美咲さ―――」
話題は変わって、いつも通り適当な話で時間が潰れていく。
けれども、四人はそれで良かった。
宿題とかそうゆうのも関係ない。明日の自分がどれだけ困ろうがお構いなし。
わけもなく、笑い合う。この空気が好きだ。
いつまでもこの四人で仲良くいれますようにと、薫は外の桜に願った。
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