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Episode 1-ss
喫茶店で薫と諒と別れた美咲と啓吾は特に意味も無く町を歩いていた。
ビルの間からは夕日が覗いている。
「ねぇ、啓吾……」
ふと美咲が声をかけた。
「ん?」
「啓吾ってさ、男と女の友情ってありえると思う?」
「……あの二人の事か?」
唐突な質問だったが、何の事を言ってるのかは啓吾には簡単に予想できた。
ずばり、薫と諒の事だ。
「うん……どう思う?」
「……"今はまだ"って感じだな」
「そう……私も同じ」
短い言葉だったが十分意味は通じる。
二人で目を合わせ、ため息をついた。
「これからどうなると思う?」
「さぁな……どうにかなるだろ」
ずいぶんと投げやりな発言。
しかし美咲はその裏にある意味にちゃんと気付いている。
「そうだよね〜……」
「……まぁ、二人とも後悔のないようにして欲しいもんだな」
ぷいっと顔を背けながら啓吾が言う。
「以外だ〜。啓吾がそんな事言うなんて」
「うっせーよ」
茶化す美咲を啓吾は軽く叩く。ペシンと音がなった。
美咲が非難の目を浴びせかけるが啓吾はそれを鮮やかにスルーした。
「……なんかさ、あの二人って私達となんとなく重なるんだよね」
気を取り直して、ついでに脱線した話題も取り直して、美咲が呟いた。
「あっ、わかるぞその気持ち」
それに啓吾も同意する。
「ただ私達と違うのは……お互いの距離かな?」
「そうだな……近づきすぎも問題だ」
「…………」
「…………」
並んで歩く。ふと、沈黙が訪れた。
お互いに、声はかけない。
と、
「あーあ! なんか私のキャラじゃなかったね! さて、帰ろっか!」
「あ、おい! 待てって!」
突然そう言って、美咲は啓吾の手をギュッと握り直して走り出した。
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