ムカツクあいつ。 | |
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「麗華ー今日はカラオケ行こー!」 「歌いまくるぞー!」 「「おー!」」 「……へ?」 いつもより遅い時間に登校した私を出迎えたのは、四人のこんな言葉だった。 ……なんか、いろいろと「へ?」だ。 昨日、ずっと考えてた。 私は何がしたいのか。何をするべきなのか。 考えて考えて……いや、言うほど考えてなかったかな? 谷本にきっちりと、私の言葉で謝りたい。 結局、答えはこれだった。 ずっとまとわりつくモヤモヤも、虚無感も。謝りたいのに謝れなかったせいなんだ。 今まで通りの関係になりたいとか。今までみたいに笑いあいたいとか。 そんな自分勝手な私の事情は後回しにした。そうしたら答えが出るまでの道のりは驚くほど簡単で、はっきりと見えて。 今まで行動出来なかった自分が嘘のように、何かが後ろを支えて押してくれてるように、決心がついた。 朝霞の言葉は凄い助けになってくれたんだ。 これは、"けじめ" だ。 謝って、謝って。たとえ許してもらえなくても、謝るしか私には道がない。 あいつとの関係がどうとか、そうゆう事は謝ってからだ。 久々に思い出した、あの苦々しい気持ち。 あんな気持ちはもう二度とごめんだ。 放課後。 冗談だと思って、受け流していたカラオケはどうやら本気だったらしい。 ユキ曰く真剣と書いてマジと読むそうだ。……まぁそれはどうでもいいか。 「で、なんでそうゆう話?」 「いや、なんとなく。ねぇ?」 ユキが目配せすると四人ともコクコクうなずいた。あからさまに怪しい。 「何よ!? なんか用事でもあんの!?」 「い、いや……ないけどさー」 「じゃあ文句言わない!」 まぁ、いいんだけどさー。 「……っていうか、皆部活は?」 「「「「一回ぐらい大丈夫!!」」」」 「うわぁ……」 見事にハモりながら自信満々に言い切る親友達を凄いと思った。 っていうか、ほんとに良いのかな……? 学校の最寄り駅から二つ目の駅のすぐ目の前に、私達行きつけの店がある。 カラオケって凄い便利な存在だと思う。 何よりも密室。誰に気を使うわけでもない。思い切りバカできる。 学校では男子の目もあって出来ない事だって出来る。 うん。カラオケ最高ー。 楽しい時間っていうのはびっくりするぐらい、駆け足で過ぎ去って。 いつの間にか残り時間もなくなっていて、フロントからの電話が掛かったから早々に荷物をまとめて外に出た。 「あー歌った歌ったー」 「麗華って歌うの上手だよねー羨ましいなー」 「でも、ユキも十分じゃん」 「なんか声が可愛いっていうか?」 女の子だけで行くカラオケっていいなって思う。 結局、押し切られる形だったけど、久々に大声だして。騒いで。笑って。本当に楽しかった。 恒例のプリクラ撮影も忘れずにして。 本当に、楽しかった。 店を出て、歩いている途中…… 「あのさー、私人間って息抜きも大切だと思うんですよー」 急にユキが声を挙げた。 「だからさ、麗華もたまにはぶちまけちゃいなよ」 「…………!」 何の事を言ってるのか、すぐに分かった。 「まぁ、今回は何があったか知らないけど、自分で振り切ったみたいだからいいけどさ、どうしても……って時には、ね?」 いつものふざけてばかりいるユキの顔は優しくて、プリクラで人一倍変な顔をするのなんか嘘みたいで。 そんな親友の顔からその言葉の重みはしっかりと伝わってきた。 また、何の抵抗もなく心にスーっと入っていく感じがする。 「麗華、私達ってさ、そんなに頼りないかな?」 「そんな事……」 「言いたく無いっていうなら私は聞かないよ、でも、言いたくなったら言ってよね?」 「どうしても、誰かに頼りたくなったら、私たちが居るよ?」 他の三人も声をすっごい真剣な顔で言ってくれた。四人の言葉が重たく、そして強く、心に響く。 昨日の朝霞といい、ユキ達といい……私、支えてもらってばっかりだなぁ…… だけど…… 「……ありがと」 涙が、出てきた。見られたくなくて俯いた。その頭をユキが撫でてくれる。 卑怯だよ……皆……? いつもはバカな事ばっかりやってるのに。 こうゆう時は急に優しくなって……全部包み込んで、受け入れてくれて。 涙……止まらないじゃない…… 「うぅ……ありがと……」 「おー。ちゃんと、決着付けてきなよ」 「私たちは応援してるからね?」 ずるい。皆、ずるいよ……だけど…… 皆、大好きだよ ―――― 数日後、私は朝練をしている生徒がちらほらいるだけの学校の校門の前に立っていた。 もちろん、こんなに早い時間に登校してきたのには理由がある。そして、覚悟も決めてきた。 「よし!」 パンと頬を軽く叩いて気合を入れる。 そして、意を決して歩き出した。 私のクラスでは、日直は早く学校へ来ないといけない。 黒板を綺麗にしたり、プリントを運んだり。その他もろもろの雑用は結構大変なんだ。 自分の教室に着いて、ドアの窓から中の様子を確認した。 「居た……」 谷本だ。眠たそうに欠伸をかいて漫画を読んでいる。 なぜだか無性に、ほっとした。 と…… 「…………!」 谷本と、目が合ってしまった。 「……あ……」 鼓動が、あの時のように高鳴る。 膝が震える。決意が揺らぎそうになる。逃げ出したくなる。 だけど。 私は決めたんだ。逃げないって。 朝霞とユキ達皆の顔が、声がフラッシュバックする。 これは、"けじめ" だ。 そしてゆっくりと教室のドアを開けて、一歩を踏み出した。 |
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